モスク爆破を非難しない“イラク民衆に連帯する”日本人
2006年 03月 02日
2月15日のエントリーにも書きましたが、私がネット上で政治的な意見を口にするようになったのは、平成16年4月8日(木曜日)に発生した「イラク邦人拘束事件」がきっかけです。
参考までに、その時の中日新聞の記事(平成16年4月9日)↓を。
「イラクで3邦人拉致『自衛隊撤退せねば殺害』 武装集団期限は3日」。
事件について語るなら、イラクについての詳しい知識が必要となります。
私もいろいろと調べ、アラブに詳しい人たちのウェブサイトも知りました。
それ以来、私はイラクに関心を持ち続けています。
そのイラクに関する、エキサイトの2月23日のニュースから。
◆ロイター2月23日
「イラクでシーア派聖地のモスク爆破、宗派間の報復合戦に発展」
時間が経過してようやく人々が冷静さを取り戻し、28日のニュースでは
◆ロイター2月27日
「バグダッドの外出禁止令解除、市内は比較的平穏」
◆読売新聞3月1日
「イラクで内戦回避の方向、連立交渉は妥結見通しなし」
爆破されたアスカリ・モスクについては、orientlibrary さんのブログ「イスラムアート紀行」の2月25日のエントリーをご覧下さい。
また、日本に伝えられないイラクの情報を知るには、ブログ「イラク:Terrorist or Resistance ?」の2月24日のエントリーが役に立ちます。
“反戦平和主義者”御用達の「バグダードバーニング by リバーベンド」でも2月23日のエントリーで現地の情報が伝えられています。
私個人としては、こちらの事件↓も関連しているように思われます。エキサイトのニュースから。
◆ロイター2月25日
「アルカイダ、サウジアラビアの石油施設攻撃で犯行声明」
◆ロイター2月27日
「サウジ軍、石油施設攻撃に関与したと見られる武装集団を殺害」
今回の事件の首謀者たちの目的が、これまで以上のイラク国内の混乱にあることは間違いありません。
イラクの治安回復を喜ばない勢力、おそらくはワッハーブ派(サウジアラビアの支配的宗派)の外国人勢力は、これまでも治安部隊に応募するイラク人を殺害したり、宗派対立を煽るべく市場を爆破したりしていました。
今回の事件は、その最たるものといえるでしょう。
彼らの狙いは米英軍のイラク撤退を阻止し、「米英とアラブの対決」の図式を維持することのようです。
そのために意味無く殺される、イラクの一般民衆。
そのイラクの一般民衆に同情を寄せるなら、彼ら外国人勢力と、その下っ端として行動するイラク人を非難すべきでしょう。
ところが、イラクの一般民衆に深く同情を寄せているはずの日本の“反戦平和主義者”の皆さんは、この事件に関してはまるで他人事で、犯人を非難するという論調はどこにもありません。
米英軍やイラク警察の横暴には敏感に反応し、徹底的に非難する彼ら。
その彼らが、民間人の大量殺戮を狙った宗教施設への攻撃を非難しないのは何故でしょう?
彼らの言うことを具体的に見てみましょう。
まずは、有名なシバレイ氏のブログ。
◆「シバレイのblog 新イラク取材日記」
◆「シバレイのたたかう!ジャーナリスト宣言。」
2月27日のエントリーでそれなりの分析をされていますが、事件そのものについては、声高に非難することを避けている印象があります。
しかもまるで「アメリカ軍がイラクに居続けたいから、わざと治安を悪化させている」みたいに受け取れる文章です。
しかし、早くイラクに親米政権を作って足を抜きたいのが本音のアメリカ軍が、本当にそんなことをするのか極めて疑問。
反米フィルターをかけていては、真実が見えないのでは?
次は「Peace On Iraq」。
こちらも同様です。
2月25日のエントリーで状況を伝えてはいます。
が、犯人たちについてのコメントは無し。そのくせ「イラク人の米軍に対する敵意」は強調。
日本国憲法第9条を説くのなら、今のイラクでどう実践すべきか具体例を聞かせて欲しいものです。
「イラク報告会」という講演会を、精力的に開いている高遠菜穂子氏。
彼女の「イラク・ホープ・ダイアリー」も、この事件については全く触れていません。
この方は以前も、ご自分の主張に都合が悪い事件については完全に沈黙し(斎藤昭彦氏の事件等)、そうでない事件については素早い対応(イタリア人ボランティアの事件等)でしたから、今回も講演会の場を含めて、事件を語ることは無いでしょう。
いったい、イラクの何を報告する報告会なんでしょうか?
おまけで、アメリカの“反戦平和”女性団体「CODEPINK」の活動を伝えるグランピーさんのブログ「気まぐれ日記」の2月24日のエントリー。
「CODEPINK」の活動も「イラクの平和のために」と言いながら、結局は「反アメリカ政府運動」に留まっていて、イラク国内で現実に治安を乱すべく活動している武装勢力に対するアピールは何も無し。
日本で呼応する動きがあったとしても、只の「NO WAR!」立て札を掲げた“反米反戦”デモくらいでしょう。
「桃色ゲリラ」のような、軽い乗りの。
※ちなみに「桃色ゲリラ」の関連で、こんなページもあります。私は見て、嫌悪感を持ちました。
前回も同じような「緊急アピール」が他のブログのエントリーに転載され、私は内容に疑問を呈しました。
その時のコメント(1月18日投稿)を部分的に再録します。
「反米」にならなければ「反戦平和」を訴えない、そう受け取れる彼らの行動原理。
私はそれを嫌悪します。
参考までに、その時の中日新聞の記事(平成16年4月9日)↓を。
「イラクで3邦人拉致『自衛隊撤退せねば殺害』 武装集団期限は3日」。
事件について語るなら、イラクについての詳しい知識が必要となります。
私もいろいろと調べ、アラブに詳しい人たちのウェブサイトも知りました。
それ以来、私はイラクに関心を持ち続けています。
そのイラクに関する、エキサイトの2月23日のニュースから。
◆ロイター2月23日
「イラクでシーア派聖地のモスク爆破、宗派間の報復合戦に発展」
イラク中部サマラで22日早朝、シーア派聖地の「アスカリ廟」が爆破され、金色のドームが崩壊したことを受け、宗派間の報復合戦に発展している。2月22日のアスカリ・モスク爆破事件は、その後大規模な宗派間抗争に発展して多くの人の命を奪いました。
時間が経過してようやく人々が冷静さを取り戻し、28日のニュースでは
◆ロイター2月27日
「バグダッドの外出禁止令解除、市内は比較的平穏」
イラクでの宗派抗争の激化を受けて3昼夜にわたり発令されていた首都バグダッドの外出禁止令が解除され、市内は比較的平穏な状況に戻っている。昨日(3月1日)のニュースでは
ロイターのジャーナリストによると、通りには車が戻り、交通警官の指示に従って走行。市民は自由に移動し始めている。
◆読売新聞3月1日
「イラクで内戦回避の方向、連立交渉は妥結見通しなし」
事態の改善には、「内戦の危機」(タラバニ大統領)を訴え、国民融和を演出した各指導者の役割が大きい。シーア派最大会派「統一イラク同盟」(128議席)指導者のハキム師は24日、「スンニ派の犯行ではない」と明言。対スンニ派報復テロに自派民兵組織が関与した統一同盟の強硬派サドル師も24日、同民兵組織の活動抑制を発表した。と、イラク国内の各宗派/政治勢力が、事態がコントロールできなくなる前に収拾しようとした事に触れています。
シーア派の「善意」にスンニ派連合「イラク合意戦線」(44議席)も応え、25日夜、事件直後からボイコットしていた各派間の対策協議に初めて参加。さらに、謝罪や賠償などシーア派に突きつけた要求の多くも取り下げ、連立交渉再開に応じる姿勢を示している。
両宗派が妥協したのは、「内戦が自派の利益にならない」(消息筋)との打算があるからだ。人口の6割を占めるシーア派は「民主選挙を通じた多数派支配」を最大戦略としており、この枠組みを崩すほどの不安定は望まない。一方、先の国民議会選に初参加したスンニ派にも、イラク戦争後の武装闘争でかえって権力を失ったとの反省は強い。
ただ、今回の事件で各派間の対立が顕在化し、連立交渉成功へのハードルを高めたと見る向きは多い。
特に、サドル師派が報復テロに関与、イラク政治への影響力を見せつけた衝撃は大きい。同師は多国籍軍の早期撤退を要求、同様の立場を取るスンニ派との橋渡し役が期待されていた。
爆破されたアスカリ・モスクについては、orientlibrary さんのブログ「イスラムアート紀行」の2月25日のエントリーをご覧下さい。
また、日本に伝えられないイラクの情報を知るには、ブログ「イラク:Terrorist or Resistance ?」の2月24日のエントリーが役に立ちます。
“反戦平和主義者”御用達の「バグダードバーニング by リバーベンド」でも2月23日のエントリーで現地の情報が伝えられています。
私個人としては、こちらの事件↓も関連しているように思われます。エキサイトのニュースから。
◆ロイター2月25日
「アルカイダ、サウジアラビアの石油施設攻撃で犯行声明」
◆ロイター2月27日
「サウジ軍、石油施設攻撃に関与したと見られる武装集団を殺害」
今回の事件の首謀者たちの目的が、これまで以上のイラク国内の混乱にあることは間違いありません。
イラクの治安回復を喜ばない勢力、おそらくはワッハーブ派(サウジアラビアの支配的宗派)の外国人勢力は、これまでも治安部隊に応募するイラク人を殺害したり、宗派対立を煽るべく市場を爆破したりしていました。
今回の事件は、その最たるものといえるでしょう。
彼らの狙いは米英軍のイラク撤退を阻止し、「米英とアラブの対決」の図式を維持することのようです。
そのために意味無く殺される、イラクの一般民衆。
そのイラクの一般民衆に同情を寄せるなら、彼ら外国人勢力と、その下っ端として行動するイラク人を非難すべきでしょう。
ところが、イラクの一般民衆に深く同情を寄せているはずの日本の“反戦平和主義者”の皆さんは、この事件に関してはまるで他人事で、犯人を非難するという論調はどこにもありません。
米英軍やイラク警察の横暴には敏感に反応し、徹底的に非難する彼ら。
その彼らが、民間人の大量殺戮を狙った宗教施設への攻撃を非難しないのは何故でしょう?
彼らの言うことを具体的に見てみましょう。
まずは、有名なシバレイ氏のブログ。
◆「シバレイのblog 新イラク取材日記」
◆「シバレイのたたかう!ジャーナリスト宣言。」
2月27日のエントリーでそれなりの分析をされていますが、事件そのものについては、声高に非難することを避けている印象があります。
しかもまるで「アメリカ軍がイラクに居続けたいから、わざと治安を悪化させている」みたいに受け取れる文章です。
しかし、早くイラクに親米政権を作って足を抜きたいのが本音のアメリカ軍が、本当にそんなことをするのか極めて疑問。
反米フィルターをかけていては、真実が見えないのでは?
次は「Peace On Iraq」。
こちらも同様です。
2月25日のエントリーで状況を伝えてはいます。
が、犯人たちについてのコメントは無し。そのくせ「イラク人の米軍に対する敵意」は強調。
日本国憲法第9条を説くのなら、今のイラクでどう実践すべきか具体例を聞かせて欲しいものです。
「イラク報告会」という講演会を、精力的に開いている高遠菜穂子氏。
彼女の「イラク・ホープ・ダイアリー」も、この事件については全く触れていません。
この方は以前も、ご自分の主張に都合が悪い事件については完全に沈黙し(斎藤昭彦氏の事件等)、そうでない事件については素早い対応(イタリア人ボランティアの事件等)でしたから、今回も講演会の場を含めて、事件を語ることは無いでしょう。
いったい、イラクの何を報告する報告会なんでしょうか?
おまけで、アメリカの“反戦平和”女性団体「CODEPINK」の活動を伝えるグランピーさんのブログ「気まぐれ日記」の2月24日のエントリー。
「CODEPINK」の活動も「イラクの平和のために」と言いながら、結局は「反アメリカ政府運動」に留まっていて、イラク国内で現実に治安を乱すべく活動している武装勢力に対するアピールは何も無し。
日本で呼応する動きがあったとしても、只の「NO WAR!」立て札を掲げた“反米反戦”デモくらいでしょう。
「桃色ゲリラ」のような、軽い乗りの。
※ちなみに「桃色ゲリラ」の関連で、こんなページもあります。私は見て、嫌悪感を持ちました。
前回も同じような「緊急アピール」が他のブログのエントリーに転載され、私は内容に疑問を呈しました。
その時のコメント(1月18日投稿)を部分的に再録します。
ウラマー協会を始めとして、反政府の立場を取る人々が政治プロセスでの活動にシフトしつつある現在、イラクで武装闘争を行うのは外国人武装勢力と、その下っ端として使われるイラク人に絞られつつあります。結局はこの事件、彼ら“反戦平和主義者”の隠し持つ「反米」というベクトルには乗らないのでしょう。
彼らはイラク国内の治安を乱し、宗派・民族対立を煽って社会を混乱状態のままに置き、米軍をイラクに足止めすることで利益を得続けようとしています。
「反米闘争は金になる」のですから。
もしこのアピールが奏功して米軍がいなくなったとしても、それまでにイラク軍・警察が一人立ちしていなければ治安は乱れたまま、民衆にとっては不幸なことに変わりありません。
だからこそ外国人武装勢力は、イラクの軍人と警察官、そしてその志望者を襲撃目標としているのです。
旧政権の軍隊と警察を解体し、イラクに混乱をもたらした米軍が面子を保ったままイラクを去るには、治安の安定が必須です。
一部の“反戦平和団体”は米軍を追い出すことには熱心ですが、その後のイラク人に平和をもたらすための(つまり治安を回復するために外国人武装勢力を駆逐するための)方策については全く提示しようとしません。
それが私には「イラク人をダシにした反米運動」としか見えず、不快になります。
「反米」にならなければ「反戦平和」を訴えない、そう受け取れる彼らの行動原理。
私はそれを嫌悪します。
by Hi-Zettaisha
| 2006-03-02 23:36
| 政治・軍事・外交