世の中のいろいろなことに対して、少しばかり主張してみます。


by Hi-Zettaisha
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普天間基地を撤去するという「実利」のために

前のエントリーの続きです。

「V字型滑走路」という言わば「奇手」によって、普天間基地移設問題は決着に向かうようにも見えます。
しかしこの案は、どこから出てきたのでしょうか?
産経新聞の記事から引用します。



◆産経新聞 4月8日朝刊(東京版)
普天間移設 V字滑走路で合意 名護市長、新提案受け入れ
 額賀長官と島袋市長は修正に関する基本合意書に署名。合意書は(1)(米軍機の)飛行ルートは辺野古、豊原、安部の三地区の上空を回避(2)周辺住民の生活の安全、自然環境の保全、実行可能性に留意-と明記した。
 合意後、共同記者会見に臨んだ額賀長官は「名護市と周辺町村の要望を満たすため、二本の滑走路を使い、環境や実行可能性も追求した」と説明。島袋市長は「住民の上空を飛行しないとの原則を曲げずに主張し、合意に達した」と強調した。
◆同上 4月8日朝刊(東京版)
普天間移設 秘策V字亀裂回避 名護市受け入れ 日米合意なお課題
 V字滑走路は、防衛庁の額賀福志郎長官と守屋武昌事務次官が温めてきた「秘中の秘」(防衛庁幹部)だった。
 額賀長官はこの構想を先月中旬、安倍晋三官房長官と麻生太郎外相に内々に示し、「落としどころはこれしかない」と漏らしていたという。今月六日夜には、名護市との同意取りつけに「二人とも自信満々だ」(同)との観測も庁内には流れていた。
 V字滑走路は折衷案の最たるものでもある。沿岸案の「原型」はとどめつつ、海側への大幅な移動を求めてきた名護市の意向に沿い、沖合方向に、V字の下の部分にあたる滑走路を増設。二本の滑走路を離陸、着陸用に使い分けることで、名護市と宜野座村の集落上空を米軍機が飛行するルートを回避する措置をとった。
 建設費が増えるなどの問題があるほか、従来の辺野古沖計画以外は認めない立場である沖縄県の稲嶺恵一知事の抵抗も予想される。だが、政府は「地域住民の安全を重視した結果だ」(額賀長官)として突っぱねる構えだ。
◆同上 4月9日朝刊(東京版)
普天間新提案 沖縄知事が反対
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設案をめぐり、額賀福志郎防衛庁長官は八日、沖縄県の稲嶺恵一知事と防衛庁で会談した。額賀長官は名護市と合意したV字形に二本の滑走路を設置する修正案に理解を求めたが、知事は「(市の)判断は尊重するが、県のスタンスは堅持する」と述べ、辺野古沖計画(平成十一年閣議決定)以外は容認しない考えを改めて表明した。会談後、額賀長官は「知事は一つひとつ(の施設)について考える立場ではない」と指摘。沖縄海兵隊のグアム移転などパッケージで再編案に理解を得るための協議は継続するが、普天間移設は、名護市との同意を根拠に推進していく方針を強調した。
◆同上 4月9日朝刊(東京版)
名護同意テコ 政府推進
 七日午後四時すぎ。防衛庁十一階にある長官室のテーブルについた守屋武昌事務次官の足元には、普天間飛行場の移設先となるキャンプ・シュワブ(名護市)周辺の図面が入った紙袋が置かれていた。
 「こういう修正案を考えました」。ころ合いをみて名護市の島袋吉和市長の前に図面を広げた。政府案では一本だった滑走路は、V字に広がる二本に変わっていた。
 額賀福志郎防衛庁長官がこの秘策を検討し始めたのは、二カ月前にさかのぼる。二月八日に就任した島袋市長は政府案に反対を明言し、米政府も地元説得の難航ぶりにいらだち始めていた。
 先月二十一日に始まった名護市との修正協議では、額賀長官が融和路線を強調し、守屋次官は名護市側の交渉姿勢を批判する強硬路線という役割分担もしながら島袋市長を協議のテーブルにとどめ、交渉の主導権を握った。その間、X字形に二本建設する案をV字形に変更する経緯もあった。
 今月四日には、米軍機の飛行ルートを住宅上空から回避させることを明記するとともに、実行可能性への留意も盛り込んだ合意書を確認。政府案の海側への大幅修正という名護市の主張を退けるため“外堀”を埋めた。そして七日、額賀長官は温存してきたカードを切った。
 V字滑走路案では、海上の埋め立て面積が増える仕掛けも用意されていた。地元経済界には埋め立て工事への期待感が高く、名護市側にはうまみと映る。ようやく、島袋市長が首を縦に振った。
これだと、防衛庁側が奥の手として「V字型滑走路」を用意していたように読めます。
しかし、別の見方もあるようです。Yahoo!JAPANのニュースから。

◆共同通信 4月8日22時38分
当初の政府提案は「X字」 名護市長、地元に説明
 沖縄県名護市の島袋吉和市長は8日夜、名護市内のホテルで記者会見し、額賀福志郎防衛庁長官と合意した米軍普天間飛行場移設の修正案について市民への理解を求めた。
 修正案は、キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部に滑走路をV字形に2本建設し、風向きによって使い分けることで住宅上空を米軍機が飛行することを回避する内容。島袋市長は当初の政府の提案はV字ではなくX字だったことを明らかにした。
 島袋市長は「陸地を飛ばないよう要請し、名護の案を押し通した」と会見で発言。同市長がX字形を拒否してV字形に持ち込んだことを示唆した。
中日新聞(東京新聞)では、現在でも「島袋市長がV字型に変えさせた」という見方を取っています。
どちらにせよ、「V字型滑走路案」は従来の「沿岸案」よりは「地元・名護市民の利益になる」と見られている訳です。
その従来の案というのも、結構あやふやだったりするのですが。
※参考資料:大部分が埋立、一部陸上の沿岸案~従来案や海上ヘリ基地との比較

これに対して、沖縄の地元マスコミはと言えばこんな感じ↓で、島袋市長の決断を全く評価していません。

◆琉球新報 4月7日
普天間飛行場移設問題が基本合意
◆同上 4月8日
新沿岸案で合意 政府、滑走路2本建設
「県のスタンス堅持」 稲嶺知事、沿岸案反対を強調
普天間修正合意・抜本的解決策にあらず/危険は残されたままだ」(社説)
住民戸惑いと反発 辺野古新沿岸案で合意
座り込みのお年寄りら不信感あらわ
辺野古計画に22億支出 97年度から05年度まで
地元主張逆手に 新沿岸案で合意
◆同上 4月9日
頭越し合意、撤回すべき 名護・野党市議11人が会見
「海上案の範囲内」 公約違反に当たらず 島袋名護市長
「新沿岸案で負荷増大」 検証へ来月中旬にも 来沖米環境保護団体
知事、新沿岸案を拒否 従来案以外なら県外 普天間移設
“自信”漂わせ 合意の「成果」アピール 名護市長会見
◆同上 4月10日
戦後3位政権・長い割には実績乏しく/沖縄基地で歴史的決断を」(社説)
強まる「知事包囲網」 新沿岸案で政府、県説得に焦点
新沿岸案合意を名護市に抗議 市民団体

◆沖縄タイムス 4月8日
「普天間」移設 沿岸修正案で合意
「奇策」に市側折れ/方針転換に批判必至
狭まる知事包囲網/修正案合意
急転合意 地元困惑/普天間移設
◆同上 4月9日
3区長ら表情硬く/島袋市長「合意」会見
「公約違反ではない」/島袋名護市長
知事、反対姿勢を堅持/「普天間移設」合意
【2滑走路で合意】まやかしの再修正案だ」(社説)
◆同上 4月10日
名護市合意に抗議/反対する市民団体
【滑走路2本案】稲嶺県政の真価問われる」(社説)

琉球新報は、「島袋市長の決断を評価する声もある」というのをある程度独立して記事で取り上げ、それなりに地元の声を伝えていますが、沖縄タイムスの記事は否定一色で、「評価する」という声はそれに埋没させるような扱いです。余程、島袋市長の決断が気に入らないのでしょう。
その分、原則論を譲らない構えの稲嶺知事を応援する(というより、圧力を掛ける)論調です。
それならば、知事が主張してきた「海上ヘリポート」案を潰した、「ジュゴンを守る」という名目での反対運動を、沖縄の地元マスコミが非難した事があったでしょうか?
逆に、反対運動を支援するような紙面作りをしてきたではありませんか。
選択肢の片方を潰し、「県外移設」をどうしても実現させたいがための報道でしょうが、「次善の策」というものを全く認めずに「普天間基地撤去」が実現できると、本気で考えているのでしょうか。

それにしても、こういう時には必ず「頭越し」という非難が出てきますね。
琉球新報の4月9日の記事にも、名護市議会野党の「基本合意は地元の頭越しになされたものであり、撤回すべきだ」というコメントが紹介されています。
名護市の島袋市長は、名護市の代表として、国との交渉に当たっているのではありませんか?
名護市議会は、名護市の行政の長としての市長に、国との交渉を委任したのではないのですか?
それを「名護市民の意見を無視した」と言わんばかりです。
間接民主制は信用できない、直接民主制でないと認めない、とでも言うつもりですか。
ならばあなた方議員も、市民の代表とは言えなくなりますよ。

話を、沖縄の地元マスコミに戻します。
「今回の合意案は絶対に認められない」という社論故か、読売新聞が4月9日に伝えた「懐柔策」、産婦人科医のいない名護市の病院に自衛隊の医官(本来の用語では「軍医」)を派遣するというニュースを、両紙とも取り上げようとはしません。
無視を決め込むつもりでしょうか。
基地移設に少しでもプラスとなる部分がある事を、認めたくないのでしょう。
しかし報道機関として、自らの主張に不利になることでも、県民には事実を知らせる必要があるのではないですか?
【4月22日追記】
沖縄タイムスは20日の朝刊、琉球新報は21日のWebニュースでようやく取り上げました。
この遅れは情報の裏を取っていたためか、それとも地元に条件闘争の動きが広がってきたからか、実際のところは判りませんが。


「環境破壊になるのは変わらない」という意見があれば、辺野古沖にヘリポートを建設した場合と比較してジュゴンへの影響の大小、そして騒音被害とのトレードオフの関係を明らかにすべきでしょう。
「米軍が離着陸方向の制限を守るとは思えない」という意見なら、日本側から監視員を派遣すべきという提案があってもいいはずです。
「固定翼機の訓練がやって来る」と心配するのであれば、厚木から岩国に移転してくる海軍部隊が夜間発着訓練(NLP)を行う場所で、同じ岩国にいる海兵隊部隊の発着訓練を行うようにすれば良いのでは?
そういう「少しでもプラスになる」提案を何もしないまま、ただただ「移設反対」を唱えても、結局は普天間基地をそのままにし、宜野湾市やその周辺の住民を危険に晒し続けるだけです。

沖縄の政治家の皆さん。
面子に拘りますか?
自分の選挙の当落が気になりますか?
それよりも、天下国家を考え、その中で沖縄県民の利益を優先するのが政治家の務めではないのですか?
普天間基地を撤去するという「実利」を得るため、沖縄県は名護市への移転を認めるべきです。
そして沖縄の地元マスコミは県民に対して、判断材料を公平に提供すべきです。
都合の悪い情報を隠蔽するようでは、ただのプロパガンダ機関に過ぎませんから。
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by Hi-Zettaisha | 2006-04-10 23:32 | 政治・軍事・外交